レンズのスガオ
マンションに着くと、私は古家さんの所へ行った。
「あれ?詩唯ちゃん」
チャイムを押すと、ダンナさんが出てきてくれた。
何だか、微妙な顔だ。
「詩唯ちゃんは、新聞、とってないよな。」
「はい、古家さん、その新聞を、ちょっと借りて良いですか?」
「…載ってたよ、お父さんだろう?」
………だまって頷くと、ダンナさんは新聞と、それから真っ赤で甘そうなリンゴを一つ、何も言わずに渡してくれた。
「……ありがとうございます。」