トーキョークラブ
酒と汗臭い体をシャワーで洗い流したあと、あたしは朝ごはんを作ることにした。
こう見えて、料理は結構得意。
気分も乗ってきて、あたしが鼻歌を歌いながら料理を作っていると
突然、ハルカに後ろから抱きつかれた。
「久しぶり、響子」
ハルカの体温と、大好きな声。
あたしの心臓は、キュンと痛くなった。
「もう、久しぶりすぎ!もう仕事は落ち着いたの?」
「とりあえずはね~。でも、明後日からは原宿と下北沢行ったり来たり。また会えなくなるかも…」
オレンジジュースを飲みながら
ハルカは表情を曇らせた。
25歳、まだまだ美容師としては若手だけれど、ハルカがこんなにも引っ張りだこということは腕があるということ。
あたしはそれが、誇らしかった。
「まあ、ありがたいことじゃない。あたしはハルくんのこと、応援してるから。でも健康には気を付けてよ?」
「それは響子もね。でも、いつもライブ行けなくてごめん」
「ううん、大丈夫」
ハルカが、あたしの長い髪を撫でて優しくキスをしてくれる。
やかんの沸騰音が甲高く響くキッチンで、あたしとハルカは
オレンジ味のキスを続けた。