トーキョークラブ
僕と梨絵は、性格も合わなければ価値観も合わない、不釣り合いなカップルだった。
無理矢理達彦に連れて行かれた合コンで、僕は酔い潰れた梨絵を介抱するハメになって、それから彼女からのアタックが始まった。
僕はそんな彼女のことを
そんなに好きにならないまま、付き合った。
「……樹、嘘ついたでしょ」
「えっ?」
僕と梨絵の間に、少しの沈黙が生まれたその瞬間に、僕はまぬけな声を出してしまった。
「あの夜、梨絵が見た女の人って樹のお姉さんだったんでしょう?」
梨絵は、クスッと微笑む。
「この前ね、知り合いのギャラリーに行ったら久野 舞さんっていうフリーの写真家が紹介されてて。すぐ分かったのよ」
「僕の姉貴って?」
「うん。だってあの夜に見た人とそっくりで、しかも同じ久野でしょう?友達が、彼女は樹のお姉さんだって教えてくれたの」
「へえ……」