トーキョークラブ
僕は苦笑いをしながら
冷たい水を、喉に流した。
「あの時、ちゃんとお姉さんだってこと言ってくれればよかったのに…」
「ああ…うん。ごめん」
再び素っ気なく返事をした僕に、梨絵は咳払いをして、そして急に僕の手を取った。
久しぶりの梨絵の手は
相変わらず温かい。
「あの時は何も聞かずに別れてごめんね。だからさ、また……」
梨絵が
そう何かを言いかけたときだった。
「あっ…」
学内カフェ横の廊下を、大きなキャンバスを抱えて歩く、見覚えのある姿を僕はとらえた。