トーキョークラブ
腰まで伸びる、きつめのパーマがあてられた栗色の髪。
パッチワーク柄のロングスカートをふわりと揺らしながら、身長と同じくらいのクリーム色のキャンバスを運んでいる。
────土手で出会った、あの人だ。
僕がレンズに収めた彼女。
不思議な、彼女。
「ちょっ、ちょっと!樹!」
気付くと僕は、梨絵の手を振りほどいて、記憶の人の元へと駆けた。
「ごめん、梨絵。またあとで!」
僕はなんだかよく分からないけど、あの写真を撮ってから、またあの彼女に出会えないかと思っていた。
セピア色に現像したあの写真は、僕のお気に入りの1枚でもあった。
だからなんだか、彼女にまた会いたい気持ちが溢れていた。