トーキョークラブ
────「おはようございます」
朝のミーティング。
店長の隣に立つ私を、先輩たちは怪訝そうに見ながら耳打ちし合っている。
私は、唇を噛んだ。
「今日はみんなに、愛ちゃんから話があるそうだから。ちゃんと聞いてね」
店長から「頑張って」と小声で言われ、私はコクリと頷いた。
思えば、こうしてスタッフの前で話すのは働き始めたとき以来だ。
あのときは、先輩たちも笑顔で私を迎え入れてくれて快く拍手を向けてくれた。
だけど、今はそうじゃない。
「…おはようございます。わざわざ時間を割いて下さって、ありがとうございます。突然のこと、なんですが」
私はそっと、深呼吸をする。
「この度、縁があって、店長に紹介された新規オープンのサロンに美容師として働くことになりました。表参道という激戦区ですが、ここで学んだことを生かして精一杯頑張ります」
深々と下げた頭を、私はいつ上げたら良いかと戸惑った。
顔を上げた頃には
先輩たちは私を、じっと睨んでいた。