トーキョークラブ





「愛ちゃん、今までお疲れ様」



私は、なんだかざらついた後味のまま2年半も勤めた美容室を出た。


先輩たちは私に何も言わなかった。




「店長、今まで本当にお世話になりました。オープンしたら来てくださいね」


「もちろん!愛ちゃんにはいい思いをさせることができなかったから…。真理子さんのお店では目一杯楽しむのよ」


「はい」




店長はうっすらと目に涙を浮かべていて、私もその姿を見て泣きそうになった。


だけど私は、店のオレンジ色の看板を見上げて涙をぐっと堪えた。






これから、やっと


私のやりたかったことがスタートする。




冷たい街・東京で。






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