トーキョークラブ
それからオレと望美は少しだけゆっくりとして、お互いのことをちょっとずつ話した。
オレは夕方から、製作中のミックスアルバムの編集作業が入っていたので望美より先に家を出た。
望美は家から荷物を持ってくると言っていた。
これからどうなるのか、オレにはさっぱり予想できないけど。
ただ普通のカップルのように
幸せで平凡な毎日を送れれば、ただそれだけでいいような気がした。
────「リョウさん、今日も遅くまでやるんすか」
「道也?おまえ何してんの」
レコーディングスタジオでマスタリングをしていたところに、何故か道也がコンビニの袋を持ってやって来たのだ。
オレは当然、目を丸くした。
「ABCのオーナーから聞いたんすよ、ここでやってるって」
道也はそう言いながらカラフルなキャップを頭から外し、イスにどかっと勢いよく座った。
ニヤニヤしながら、道也は缶ビールとチューハイをオレに手渡した。