トーキョークラブ
────「おい、樹おまえどこに行ってたんだよ」
達彦が、僕の荷物を持ちながら面倒そうに螺旋階段を下りてきた。
「達彦ごめん。ちょっと色々あって…」
「色々あってじゃねーよ。梨絵ちゃんのこと置いて走り去るなんて、樹らしくねぇじゃん」
達彦は僕に荷物を押し当てて、また面倒そうなため息をつく。
「梨絵ちゃん、泣いてたぞ。何があったか分からないけどさ、女の子は泣かせちゃだめだぞ」
「…うん」
携帯電話のメールボックスには、梨絵からのメール。
だけど正直、僕の頭の中には
出会ったばかりの佳世のことしかなかった。梨絵の笑顔は、忘れていた。