トーキョークラブ
「ねぇ、これからホテル行かない?セックスしようよ」
美希は、オレがカクテルを頼んだあとにためらうことなくそう言った。
ウェイターの目がちらちらとこちらに向けられていたが、オレは拒むことなく「いいよ」と答えた。
「じゃあ、早く行こ。美希、リョウとしたくて今夜来たのよ?」
「おまえ、酒は?」
「いらないから、ねぇ、早く」
ギラギラと光る爪のおまけのように伸びる細い指を、美希はオレの指と絡める。
オレはため息をついて
ウェイターに代金を払った。
「カクテル、あの女にやっていいよ。ごちそうさま」
「……かしこまりました。ありがとうございました」
カウンターのいちばん奥で
つまらなそうにしていた女は、目を丸くしてカクテルとオレを見比べている。
黒髪の、童顔の女。
初めてみた彼女は、何となく面白かった。