トーキョークラブ
美容室・BEAUTY RULEの開店が翌日に迫った夜、私の携帯電話が鳴った。
それは、ちょうど真理子さんと弘瀬さん、その他新規スタッフたちとの飲み会が終わった直後だった。
「もしもし」
電話の相手は、弘人だった。
「愛、今から会える?」
「今から…?」
腕時計を見ると、針はもう深夜1時を指している。
「うん。今すぐ会いたい」
弘人の甘い声に耳が熱くなる。
心臓が締め付けられた。
「でも、こんな時間じゃいつものホテルには行けないよ。私、いま表参道に居るの」
「表参道?じゃあ、駅前で待ってて」
弘人はそう優しく言って
電話を切った。
でも、弘人は単身赴任中で車も持っていないはず。
汐留の賃貸マンションからは、電車もないのにどうやって来るんだろう。
私はそう思いながら駅へと向かった。