トーキョークラブ





「なんか…すごいね」


「何が?」



点滅している信号を過ぎ、私は新車の匂いを吸い込みながら弘人の横顔を見た。



「ううん、何でもない」




すごい。


それよりも、ひどい。



私は、弘人の奥さんよりも先にこの新車の助手席に座ってしまったわけで、なんだか申し訳ないような気持ちになった。


何を今更、と言われたら
それまでなのだが。






「俺の家、来る?」



弘人がそう囁いたのは
東京タワーの見える車内で、激しいキスをしている最中だった。


今まで一度も部屋に案内してくれなかったのに。




弘人は、優しく微笑んだ。






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