トーキョークラブ
「先輩の版画とは違うんですよ、作業の内容が。それに私、ショートフィルムのコンテストを控えてるんで」
ドンッ、と中ジョッキをテーブルの上に置いた小坂は黒い目をパチリとさせた。
この総合芸術グループの映像部門には、小坂1人しかいない。
サークル内の他に腕のあるメンバーは映像グループから動こうとしないし、グラフィック関係のメンバーすら俺達のグループには参加してくれない。
確かに、小坂への負担は
大きかった。
「凛太朗、そういえば今日結衣ちゃんは?」
彫刻部門の先輩が、周りをキョロキョロと見渡しながら俺にそう聞く。
「あ、あぁ…。結衣は今日は来ないって言ってました」
「なんだ、つまらないな。せっかく結衣ちゃんと語ろうって思ってたのにな」
俺はそんな先輩に苦笑いを返して、カシスサワーを半分以上口に含んだ。