トーキョークラブ





結衣はあのあと、本当に大学を辞めた。



まさか、とは思っていたが
どうやら彼女は本気だったらしい。





もちろん、俺は結衣に何度も理由を聞き出そうとしたのだが「分からない」の一点張り。


両親の承諾もきちんと取ってある、と言って結衣は家に帰ってしまった。




俺に対する態度が、異様に冷たかった。







────「理由、聞き出せたんですか?」



飲み会もお開きとなり
みんなが2次会に行こう、と道を歩きながら騒いでいる中で小坂は紫煙を漂わせていた。



「結衣のこと?」


「はい」




セブンスターの香りを俺は隣で吸い込みながら、ため息をついた。



「俺には何も話してくれなかった。分からないってしか言わなくてさ」


「なんかそれ、結衣さんらしくないですね。やっぱり何か隠してるんじゃないですか?」



小坂は携帯灰皿に煙草を押し込んで、黒いマニキュアを塗った爪を見つめていた。


俺はまた、ため息をついた。






< 164 / 176 >

この作品をシェア

pagetop