トーキョークラブ
結衣はあのあと、本当に大学を辞めた。
まさか、とは思っていたが
どうやら彼女は本気だったらしい。
もちろん、俺は結衣に何度も理由を聞き出そうとしたのだが「分からない」の一点張り。
両親の承諾もきちんと取ってある、と言って結衣は家に帰ってしまった。
俺に対する態度が、異様に冷たかった。
────「理由、聞き出せたんですか?」
飲み会もお開きとなり
みんなが2次会に行こう、と道を歩きながら騒いでいる中で小坂は紫煙を漂わせていた。
「結衣のこと?」
「はい」
セブンスターの香りを俺は隣で吸い込みながら、ため息をついた。
「俺には何も話してくれなかった。分からないってしか言わなくてさ」
「なんかそれ、結衣さんらしくないですね。やっぱり何か隠してるんじゃないですか?」
小坂は携帯灰皿に煙草を押し込んで、黒いマニキュアを塗った爪を見つめていた。
俺はまた、ため息をついた。