トーキョークラブ
望美はトーストを頬張りながら、テレビを無言で見ている。
オレは、何をどう話そうか考えた。
「望美ってさぁ」
煙草を一本、ゆっくりと吸い終えたあと、オレはやっと口を開いた。
「高校、どうしてるんだ?」
そう質問すると、望美は「通信教育だよ」とあっさり答えて、キッチンで食器洗いを始めた。
食器がカチャカチャと当たる音と水の音が、テレビから聞こえるアナウンサーの声を時折遮る。
オレの頭の中は
道也の言葉でいっぱいだ。
道也は勘の良い男だ。オレが望美の居場所を知っていることを、道也はすでに感づいているだろう。
道也のことだから、美希にさっそく伝えているかもしれない。
望美がもし、美希に見つかったら?
オレの家に居ると知ったら?
正直、どうなるのかは分からなかったが、望美がオレと一緒に暮らすことはできなくなるだろうと思った。
なんだかそれは、嫌だった。