トーキョークラブ
「サイッテー!」
白いセラミック製のテーブルがドンッと鈍い音を鳴らし、その直後、僕の顔面はまぬけにも水でぐしゃりと濡れた。
会話が聞き取れないほどまでにぎやかだった学内カフェが、一気に静まる。
8ビートで揺れるサックスの
かすれたBGMだけが、今の僕にとっての心のよりどころだ。
「浮気するなんて、信じられない!樹(イツキ)がそんな人だとは思わなかった」
メガネのレンズが濡れてしまったせいで、いや、おかげでか、目の前でヒステリックになっている梨絵の顔はぼやけている。
僕は何も言わずに
ぬるくなった紅茶を飲み干した。