トーキョークラブ
「うっわ、おまえって典型的な草食男子なんだな!やる気なさすぎ」
午後の講義が終わり、放課後。
生徒ならば学部学科関係なしに自由に使える暗室で、僕は高校時代から仲の良い、同じ学科の達彦と写真の現像にいそしんでいた。
「別に、やる気ないわけじゃないけど…。弁解しても無駄かと思って」
「その時点でやる気ねぇだろ。姉ちゃんだって、言えばよかったのに。そうしたら別れなくても済んだかもよ?」
現像液にフィルムを浸しながら、僕は長いため息をついた。
「別れたかったのかも。…というか、やっぱり僕には女心とかよく理解できない。付き合うのは向いてないよ」
「じゃあ、何?おまえはこの先彼女はつくらないわけ?」
モノクロの写真が浮かび上がる。
「つーか、その被写体は何?」
隣でフィルムの水洗いをしていた達彦が、目を細めて僕の白黒写真を見る。
僕はしばらく黙って
「恋人は、今はカメラだけで充分だよ」と答えた。
達彦は、被写体の正体に首を傾げた。