トーキョークラブ
技術が無さすぎるとか、洗髪が下手だとか、ブローもまともにできないのか、なんて言われる毎日。
私は、人間関係の深い底へと蹴り落とされたのだ。
ハサミを持たせてもらえるのは、深夜の店内。マネキンの前でだけ。
営業時間内は、先輩のアシスタントとして付かせてもらえるか、それかずっと雑用をしているか。
私は、美容室を辞めたいと何度も思ったけれどそれでも我慢して続けている。
ここで辞めたら
もう東京では美容師を続けていけない気がして。
もっと技術を向上させたら
フリーとしてでも働こうと、そう夢見て今まで生きてきた。
東京は、冷たい街。
煙草を吸いながら、ガムを噛みながら、ヘッドフォンで音楽を聴きながら。
人間同士が無関心なこの東京のスクランブル交差点で、私は何度も涙を流しそうになった。