トーキョークラブ
─────「……もしもし?」
23時。静まることのない、都会の夜に私のケータイが鳴り響く。
画面に表示された
弘人という名前を見て、私はためらいつつも通話ボタンを押した。
「……愛?今から、会わない?」
2週間ぶりに聞いた、弘人の声。
電話が掛かってくると、私が聞く彼のセリフはいつも決まってこう。
私は足をぶらぶらと揺らし、どうしようかと唸りながらケータイを握る。
「ごめん、またいつものホテルでだけど…。会いたいんだ」
弘人と、会うということ。
それはただセックスをするということだけで、私はただの愛人。
いや、愛人までもいかないかもしれない。ただのセフレ。愛なんて感じない、だけど求めてしまう自分。
私は、ケータイを片手に
ビルの屋上から抜け出した。
そして、いつものホテルへと向かった。