トーキョークラブ
恵比寿ガーデンプレイスから間もない、とある貸ビルの一室。
10人の学生たちの中で
俺は指揮を取り、時間に追われながら作品の展示に勤しんでいた。
「凛太朗!差し入れ買ってきたよ」
ふいに自分の名前を呼ばれ、振り返ると同時に押しあてられた冷たい缶ジュース。
無邪気に笑う彼女と
それに驚く俺を見て、ケラケラと笑う仲間たち。
「凛ちゃん、驚きすぎ!」
「いやいや…。これは驚くって!」
よく冷えたオレンジジュースを、みんなに配りながら俺をからかう彼女の結衣。
初夏の風が吹き抜けるこの部屋に、そんな結衣と俺、仲間たちが集合していることには意味がある。
明日の夜に、ここで俺たちのグループ展が開かれるのだ。
“俺たち”とは、SKETCH of LOVEという東京都内の美大・芸大の学生グループで、7年前から本格的に活動をしている、いわば校外サークルのこと。
都内の美大・芸大生なら誰でも参加ができ、今やメンバー数は50人を超えるアート集団である。