トーキョークラブ
音楽好きな両親の血を受け継いで、あたしは12歳でベースを始めた。
地元の秋田で組んだバンド。
高校を卒業し、メンバー4人は田舎を出て上京を決心した。
巨大なアンプから
割れるように轟く低音。
汗を飛び散らせて、四弦を鳴らすことが快感なのだ。
「お疲れ様でした~」
「はーい」
ライブ後、楽屋に戻ると、あたしはすぐに缶ビールをイッキ飲みした。
今夜のライブは
プライベートでも仲の良いバンド、シェルターズの関東ツアーに呼ばれて
総勢3組の対バンドのうちの目玉として参加していた。
たった1つの狭い楽屋には
シェルターズの3人と、他2バンドの9人の男たちが煙草をふかしている。
あたしはただ
受動喫煙しているだけだった。