トーキョークラブ
「ごめん、寝てた?」
人数の少ない店内だと、一際大きく聞こえる潤の声。
「ううん、普通に起きてた。眠れなかったから、ちょうど良かった」
「彼氏は大丈夫?」
「大丈夫。最近忙しいみたいで、夜はぐっすり寝てるんだよね」
「そっか、それならいいけど」
レモンサワーを2つ、ウェイターに頼んでから潤は、煙草に火を着けてしばらく黙り込んでいた。
童顔の潤に煙草は似合わないのだが、窓の外をジッと見つめながら煙を吐くその姿は、目を引くものだ。
そうして潤は、2本の煙草を吸った。
「……唐突、なんだけど」
その言葉は
たしかに唐突に放たれた。
「誰にも言ってない話なんだけど…。実はこの間、DSC musicからメジャーに移籍しないかって誘われたんだ」
あたしは、耳を疑った。
それは大袈裟な表現方法としてではなく、本当に、純粋に自分の耳を疑った。