トーキョークラブ
「えっ…。ちょ、ちょっと待って!それはTHE EIGHTYsとしての話?」
身を乗り出して、潤に目を合わせる。
潤は一口レモンサワーを飲んで、困惑気味の微笑をあたしに向けた。
「バンド単位での移籍話だったら、もうとっくに話してたよ」
「……ということは、潤だけってこと?」
あたしの問いかけに
コクリと静かに頷いてみせた潤の表情は、とてつもなく曇っていた。
あたしは、ただ茫然。
DSC musicというメジャー音楽事務所は、ロックバンドからポップユニット、はたまたジャズシンガーまで幅広く手掛けている大手レコード会社。
業界の中では
評判も良いという事務所。
そんなDSC musicからメジャーデビューができたら、それはそれは、快挙なことである。
メジャーデビューだなんてそうそうないチャンスが、業界大手からまわってくるだなんて、夢のまた夢。
しかし、現に声が掛かった。
それは神のイタズラか、THE EIGHTYsのリーダー、潤だけに。