トーキョークラブ





カウンターの端で、1人の女が肩を震わせているのが見えた。




爆音で音楽が流れ
若者たちが踊り狂うその世界の端で、彼女は声を殺して泣いている。


オレの視線は
彼女に釘付けとなってしまった。







「リョウさん、見すぎ!」


はっと我に返ったのは、道也の笑い声でだった。



「女の子が泣いているときは、そっとしとくのが1番っすよ?」


「別に、手なんか出さねーよ」


「あら、珍しい」


「うるせーなぁ、お前は。ちょっと便所行ってくるわ」




道也の額を軽く平手で打ち、オレはカウンターから離れた。






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