トーキョークラブ
─────「あのさ。前に、どこかで会ったことなかったっけ?」
クラブを抜け出して
眠らない街の、ネオンの下を歩き進んでいく。
望美と名乗った彼女は、かすんだ夜空を見上げたままオレの隣にいた。
「……あったよ。ソルティードッグ、アタシにくれた」
「ソルティードッグ?」
「美希と一緒にいたとき、って言ったら思い出す?」
望美は、そっと口元を緩める。
オレはやっと気付いた。
何日か前、美希とクラブを抜けるときにオレがカクテルを譲った女。
つまらなそうで
だけどオレがカクテルをあげると、彼女は目を丸くしていた。
「あの時の…。ソルティードッグ、美味かった?」
オレが笑って望美を見ると、彼女は突然立ち止まって、オレの目を覗き込んだ。