トーキョークラブ
「どうして美希のこと知ってるんだ、って聞かないの?」
彼女は、今にもキスをしそうなほどの至近距離で目を丸々とさせていた。
オレは思わず、眉間にシワを寄せる。
「どういうこと?」
「美希はあなたに何も言わないんだね…。アタシ、妹の望美」
ニコッと笑った望美。
しかし、目は笑っていなかった。
オレの心臓が、初めて止まりそうになった。
「ごめん、オレはもう帰るわ。お前もさっさと帰れ」
「どうして?」
「だってお前、高校生だろ。それに…」
「それに、何?」
望美の強い眼差しに、オレは少したじろぎながら目線を落とす。
病気のこと。
言ってもいいのか、戸惑った。
しかし彼女はそれを悟ったようで、オレを睨み付けていた目は、暗くなってしまった。