トーキョークラブ
すると望美は、なんともいえぬ表情で、オレをみて無理に笑った。
「ハハッ、それにアタシ、心臓病だもんね。そんな女なんて抱けないよね」
渋谷のネオン。
無情にも、ラブホテルの前で笑う望美の目には、涙が浮かんでいた。
「……しょうがないのよ…。美希にはもう嫌われたくない。だから、自分で…自分でやるしかないの…!」
「おいっ、望美!待てよ!」
半泣きしながら
望美はオレの腕を引き、ホテルの中へと突き進んでいく。
「同情なんてしないで。ただ黙って、アタシと寝てよ…」
オレは、もう
どうすることもできなかった。
しかし、頭の中にはもう美希のことなんかなくて、目の前でただがむしゃらに泣く望美しか見えていなかった。
彼女は、『美希にもう嫌われたくない』と言った。
もう、美希が体で稼いだ金で
生きるのは嫌だと。
自分を売り、自分で生きる。
決して正しいことではない、だけど、そんなことは分かっていても望美はそう決めた。
オレはそんな彼女を
抱いてしまった。