トーキョークラブ





それゆえに、最近あたしは
ハルカと同棲しているのに、少しも会えていない。




だけど、だからと言ってバンド同士の付き合いを疎かにしてアパートに帰っても、きっとハルカは居ないだろう。


ここ何日か、ヘアスタイル誌に載せる新作のためにサロンに泊まり込んでいるからだ。






「あたしも行く。でもちょっと先に行ってて」


「分かった。すぐ来いよ!」




家に帰ろうか迷ったが、結局はみんなと飲みに行くことにした。




ケータイのアドレス帳を開いて
ハルカに電話を掛けてみる。


10秒ほど呼び出し音が鳴って出たのは、無機質な女の声。


留守番電話サービスで働く女。
いつもハルカの代わりに出る女。
そんな彼女に、あたしはため息を返した。




また、ハルカは出なかった。






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