トーキョークラブ





─────「お、この写真なんか好きだな」




放課後、いつもの暗室。


僕は達彦と2人でまた、休日に撮り溜めた写真の現像にいそしんでいた。




「どれ?」


「これこれ。セピアがすごく合ってる。この雰囲気、お前らしくていいよ」




達彦が指した写真を見て
僕も唸った。


あの土手で会った、不思議な彼女の去り姿。




「あぁ…うん」


「これ、誰かモデルにしたの?」


「まさか。知らない人だよ」


「へえ。美人だった?」


「不思議な人だった」


「なんじゃそりゃ」




達彦は首を傾げて
ひたひたと現像液にフィルムを浸した。



達彦は、空の写真しか撮っていなかった。






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