トーキョークラブ





─────「じゃ、彼によろしくね!」



講義後、校門で別れたりっちゃんは、そうイタズラに笑った。





それからワタシは、六本木ヒルズへと向かうために駅へと向かった。



歩き始めて数分後、いじっていた携帯電話から、マライア・キャリーの歌が流れ出した。


驚いて画面を見ると
ワタシはさらに、驚いた。




《着信:滝川さん》


と、画面に大きく表示されている。





「はっ、はい!もしもし!」


初めての電話に、手がびっしょりと汗で濡れている。



「あ、姫乃さん、今大丈夫ですか?」


「はい、大丈夫ですけど…」


「なら良かった。実は今、ちょうど姫乃さんの大学近くで仕事してて。今から事務所向かうんですけど、姫乃さんはまだ向かわないですか?」




突然の、滝川さんからの電話。


耳元に聞こえてくる彼の、低くてなめらかな声がワタシを硬直させる。




「えっと…ワタシも今から向かうところで。駅まで歩いてました」


「あ、じゃあ俺が送りますよ!今から向かうんで、待ってて下さい」




彼はそう言うと
簡単にワタシの居場所を聞いて、電話を切った。






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