トーキョークラブ
「じゃ、切ってもらおうかな。愛ちゃんに」
真理子さんがそう言ったのは、私が彼女へ挨拶をしようとしていたときだった。
「私の髪、カットしてくれる?自己紹介の代わりにね!」
「えっ…。いいんですか?」
まるでタイミングを見計らったかのように、彼女はにやりと笑う。
私が戸惑っていると
先ほどの彼が、「ハサミ持ってるでしょ?」とせかすように言った。
「カットの技術はもちろんだけど、コミュニケーション能力も美容師には必要なんだから。ほら、おまかせで頼むわよ!」
彼女は笑顔でシートに座り
慣れた手つきで自らケープを巻き、私をじっと見つめた。