トーキョークラブ





映像学科に在籍する小坂は、独特な個性を吐き出している女だ。




彼女には、他人には理解できない、あるいは彼女にしか見えない、強くまっすぐなポリシー的なものが通っている。



彼女は、黒以外のものは身に付けない。


そして今時珍しく、モノクロの映像しか彼女は創らない。




そんな彼女を変人と捉えるか、個性的な人と捉えるかで、彼女に対する見方はだいぶ変わってくる。


個性的と捉えた俺にとって
彼女は、良い刺激を与えてくれる存在へとなった。







「彼氏は人混みが苦手で、彼女は人混みが得意。なんだか面倒ですね」



小坂は、煙草を美味そうに吸って、ゆっくりと煙を吐いた。




「面倒?そんなこと考えたこともないな…。というか、感じないよ」


「じゃあ先輩はこうやって、彼女がちやほやされているのってどう思うんですか?」



甘ったるい香水の匂いと
異国の煙草の匂いが、風に乗って俺の周りを取り巻いていく。


窓越しに見える、数人の男女に囲まれた結衣をただずっと見つめた。






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