トーキョークラブ
俺はただの美大生で、才能があるわけでもなく、好きに版画を描くだけ。
注目なんてされたこともないし、ちやほやなんてことも経験ない。
そんな俺から見れば
今は特に目立った制作活動をしていない結衣が注目を浴びているのは、たしかにうらやましくも感じる。
しかし、彼女には地位も才能もある。
社交的な彼女には自然と人が寄って来るし、それを彼女は喜んでいるのだ。
「結衣には勝てないよ、何もかも」
短くなってしまった煙草を地面に擦りつけ、そのまましゃがんで、アスファルトの破片をいじくった。