トーキョークラブ





「アタシ、もう帰る」




望美は涙をこらえながら、肩を震わせながら、そう言った。



「帰るって…どこに帰るんだよ」




望美は、もう病院にも自分の家にも帰らないと言っていた。


脱け出した病院に帰っても、効果を感じられない治療をひたすら受けるだけで、それはただただ、体を弱らせていくこと。

家に帰っても、母親の疲れた表情を見るばかり。



望美はもう、そんな
自分の居場所すら見失っていた。






「望美」



声を掛けると、うつむいていた望美は顔をゆっくりとオレに向けた。





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