夏の名前
Prologue
―8月28日。AM.8:00
相葉は、雑多な部屋を片付けていた。
部屋が、お掃除ロボットでは処理できなくなってきたからだ。
せわしなく動かしていた手を、ふと止める。
「懐かしいな…。」
つい微笑んで、それを手にとる。
すっかり埋まってしまっていた、日記だった。
パラパラとめくっていたページが、ある日で止まる。
―8月28日。
今日と同じ日付だ。
開け放たれた窓から、フワリと風が舞い込む。
それとともに、忘れかけていた記憶が蘇る。
そう。
あの時も、同じような風が吹いていた。
バス停で1人、大切な人の笑顔を待っていたんだ…。