六天楼(りくてんろう)の宝珠
※※※※
「らーいーっ。──莱、何処にいるの? 出ていらっしゃい」
さわさわと風に揺れる木々を掻き分けて、翠玉は気付けば六天楼より遠く離れてしまっていた。
──ここはどの楼かしら……。
ぼんやりと考えながらも、猫探しも何処か上の空である。
──さっき、槐宛様が仰っていたのは何だったかしら……確か、そう……
女性を。
夫が女性を連れ帰ったと、そう言っていなかったろうか。
不意に胸が苦しくなって、思わず手を添えた。
──それは。
殿方は子供な所があると言っていたのを思い出す。いつまでも放置していると、他所へ行ってしまうとも。
だが、考えてみれば確か結婚前に夫は「他に思う人がいる」という様な思わせ振りな態度を取っていた様な気がする。だとすればそれは、自分の話ではなく。
「……もしかして、琳夫人ではありませんか?」
聞き慣れぬ女の声がして、翠玉はその出所を求め辺りを見回した。
内廊下も階(きざはし)も様子は西のそれとは変わらないが、開け放たれた室内の様子は生活感が薄い。一目で客房とわかる。
「らーいーっ。──莱、何処にいるの? 出ていらっしゃい」
さわさわと風に揺れる木々を掻き分けて、翠玉は気付けば六天楼より遠く離れてしまっていた。
──ここはどの楼かしら……。
ぼんやりと考えながらも、猫探しも何処か上の空である。
──さっき、槐宛様が仰っていたのは何だったかしら……確か、そう……
女性を。
夫が女性を連れ帰ったと、そう言っていなかったろうか。
不意に胸が苦しくなって、思わず手を添えた。
──それは。
殿方は子供な所があると言っていたのを思い出す。いつまでも放置していると、他所へ行ってしまうとも。
だが、考えてみれば確か結婚前に夫は「他に思う人がいる」という様な思わせ振りな態度を取っていた様な気がする。だとすればそれは、自分の話ではなく。
「……もしかして、琳夫人ではありませんか?」
聞き慣れぬ女の声がして、翠玉はその出所を求め辺りを見回した。
内廊下も階(きざはし)も様子は西のそれとは変わらないが、開け放たれた室内の様子は生活感が薄い。一目で客房とわかる。