六天楼(りくてんろう)の宝珠
──そんな。

 自分のせいで紗甫達が罰を受ける、そんな事は考えてもみなかった。

「因みに御館様、侍女達の罰はどの様な内容のものになさいますか」

「前例では監督不行き届きは、鞭で打つ事になっている。それに準ずるのが妥当か──」

「待って! 待ってくださいっ!!」

 気づけば翠玉は跳ね飛ばす勢いで扉を開けて、中に駆け出していた。

「悪いのは私なんです! だから紗甫達には罰を与えないで。私だけなら、どんな罰でもお受けしますから!」

 突然の闖入者にも関わらず、二人は全く動じる気配がなかった。

「朗世。──行け」

「はっ」

 碩有は顔色一つ変えずに部下を一瞥、それを合図に朗世は房を出て行った。

「朗世さん! 待って下さいってばっ」

 追いすがろうと駆け出す翠玉の身体を、だが横から夫の腕が邪魔に入る。

「──今の言葉、忘れないで下さいね」

 あっという間に視界は碩有の身体に塞がれてしまった。先ほどまでのもの思いなど綺麗さっぱり吹き飛んで、翠玉は狼狽した頭で彼を見上げる。

 なのでそこにあった顔が、怒りとはまた違った不穏な表情をしているのに暫くは気づかなかった。

「え!? ああ、勿論です。でも朗世さんの指示が! 罰を与えに行ってしまったのでしょう」
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