最後のキス
お人形
愛結
「ねーえ、愛結ちゃん!付き合おうよ」
「あ、ごめんね。私、好きな人がいるんだ」
無茶苦茶な嘘を付く。
「そーなの?まあ、それでもいいからさ、付き合おうよ~」
「いや…ほんとごめんね……」
さっきからしつこいな、この人。
「分かったわ…じゃーね」
やっと男は去って行った。
あたし、小澤愛結は一ヶ月前に高校1年生になった。
まだ高校に入って一ヶ月なのにも関わらず、10人に告白された。
でもあたしは恋愛の存在を信じなかったし、恋愛はくだらないものだと思った。
そんなあたしに似合わない名前は、愛を結ぶと書いて「あゆ」と読む。
よくこんなに似合わない名前を付けれたな。
顔も知らない男に告白されて、
名前も知らないままフッた。
相手だってまだあたしの事なんかよく知らないのに
何がよくてあたしに告白するんだろう。
私の何が欲しいんだろう。
適当に過ぎていく毎日の中で、
お人形みたいにあたしは生きていた。