最後のキス
友達
「えっなに!?愛結、また告白されたの!?」
教室に入ると、中学の時からの数少ない友達、知華が私に言った。
「んー…まあね。でもフッたよ」
「えっ何でえ?付き合っちゃえばいいじやん」
知華はいわゆるギャルみたいなものだった。
髪は金に近い茶色だったし、ピアスもタトゥーもしていた。
タトゥーは彼氏とお揃いなんだよ、と笑顔で言っていた。
「あたし、付き合うとかどうでもいいんだよね。それより知華は今どうなの?」
「えっあたし!?」
急にふられた知華がびっくりしたような表情をする。
でもその顔はすぐに笑顔に変わった。
「またタトゥー増やしちゃった!彼氏とお揃いで!」
「はあ!?」
知華は嬉しそうに笑いながら、腕を見せてきた。
白い肌には蝶が舞うように飛んでいた。
「ほんとに…馬鹿じゃないの…一生消えないんだよ!?」
知華には悪いけど本当に馬鹿なんじゃないかと思った。
恋人なんていつかは別れてしまうに決まっているのに、
知華は今の愛の証を体に刻みこんでしまった。
「大丈夫だって!あたしらラブラブだし!」
知華はそう言うけど、実際知華の彼氏はコロコロ変わっていた。
毎回、三ヶ月も持たないような勢いで別れている。
今も残っている知華の足首にある薔薇のタトゥーは、前の彼氏とのものだ。
「ふぅん。ま、いーや。」
「何それ?冷たいなあ、愛結は。そんなんだから人形みたいなんだよ」
ー人形。
よく言われてきた言葉の一つ。
知華の言葉が妙に心に刺さった。