蜘蛛ノ糸
*1*
「今までどこに行ってたの!? 誰も何も知らないって言うし! 心配したじゃない!」
病院のラウンジで、私は市川を問いただした。
──市川は、交通事故で“狭し人”になった私を救う手助けをした後、
パッタリ姿を消したのだ。
必死に彼を探して、やっと見つけたのだから、尋問くらい受けてもらわない訳にはいかない。
「そう目くじら立てんなよ。ほら」
缶ジュース(それもオレンジジュースだ)を押しつけられる。
子供じゃあるまいし、こんな物で落ち着くはずもないけど、少し冷静になろうと自分に言い聞かせた。
一人イライラしている私をみて、市川は頬笑んだ。
「俺を捜し当てたのには驚いたけどな」
「ここに来る時、段々腕が熱くなって、……私の腕に何したの!?」
「はァ? 何もしてねーよ」
「え!? だって市川に近付くほど──」
「とにかく俺は何もしてない。もし何か感じたってんなら、それは“霊感”ってヤツだよ」
霊の存在を感じる力というやつ……?
「狭し人になって生死の境をさまよってたんだ、霊応体質になってたって不思議じゃない」
「そうなんだ……私てっきり……」
何か禍々しい呪いでも付けられたのかと思った。
「で、俺に何の用?」
「え!?」
「用事があるから俺を探してたんだろ?」
「何の用って……別に……」
片想いしている相手に言われたら、すごく胸が痛む。
『好きだから会いたかったの!』って、正直に言えたらいいのに……。