蜘蛛ノ糸
「なるほどな。……幽霊の仕業じゃねーの?」
市川は茶化すけれど、案外そうかもしれない、と思う。
私も1度は幽霊になったんだから、そんな存在が他にもいても不思議じゃない。
市川が言う。
「じゃあ、そのありがたいノートを今日中に写したいから、ちょっと貸してくれよ」
*2*
私たちは街の図書館へやって来た。
市川の勉強に付き合って……というか、私が勝手に同行した。
ちょっと目を離したら、またどこかへ行ってしまいそうだったから。
「ノートだけ貸してくれれば良かったのに、何でお前までついて来るんだよ」
「別に良いでしょ。ほら、さっさと写しちゃってよ」
テーブルにノートや文具を広げ、やっつけ仕事を始めた市川の向かい側で、私は本を読んだ。
雑誌、図鑑、文学……。
クロスした腕に顎を乗せて読書する私を見ると、市川はペンを休めて言う。
「本、あんまり読まないだろ」
「難しいのって疲れちゃうんだよね。活字ばっかだと目回るし」
「そんな日渡にオススメの本、探してやるよ」
静かに席を立ったので、私も後ろについていく。
どこに行くのかと思っていたら、なんと児童書のコーナーに入っていく。
背の低い本棚ばかりが並ぶ部屋には、小学生くらいの子や、親子連れがいて。
高校生2人って、ちょっと恥ずかしい気がした。
市川は幼児向けの棚にある絵本を適当に引き抜いて渡してきた。