蜘蛛ノ糸
たまたま傍にいた大人しい女子生徒に話しかける。
「ねえ、私──」
彼女は私の向こう側にいる友達に手を振って、通り過ぎていく。
危うくぶつかりそうになって、私の方が慌てて道をあけた。
「そんな……、ねえ……? 私何か悪いことした?」
机をくっつけて弁当を食べている子たちに聞いても、まるで見えていないかのよう。
「うそ……これって……」
いじめ──
考えたくなかった言葉が頭をよぎる。
「ね、ねえ、みんなッ!! 聞いてよ! ねえ!?」
教室に大声を撒き散らしても、誰も私の方を見ない。
私の存在を消してしまっているのだ。
そう、完全に。
最初に感じた驚きや不安が、今や悲しみを通り越して、怒りへと変わっていた。
夏休みが明けた途端、これだ。
よりによって、親友だと思っていたマキとハルカまでも、私を無視する。
あの遅刻してきた男子だって、さっきは口を利いたくせに。
今は他の男子と一緒になってバカみたいに大笑いしている。
腹が立っていたはずなのに、孤独を感じたらまた、いわれのない悲しみが込み上げてきた。
自分の気持ちもわからなくなってしまうくらい、もう、心も頭の中もぐちゃぐちゃだった。
「みんな、最低……!!」
そう吐き捨てて教室を飛び出していた。
(何で!? マキもハルカも……! 親友だと思ってたのに!!)
「ばかっ! ばかバカバカばかっ!!」