妄想小説(短編)
「すみません、お待たせしました
 か?」

はじめ僕はその人の言っている言葉
の意味に気づかず、すぐには返事を
返せなかったが、

少し正気に戻ってくると、その人は
僕に、待たせてしまったかどうかを
聞いていると思い至った。

「あ、いや、全然大丈夫です!
 僕らもさっき来たばっかりです
 から」

その人、鈴木杏樹さんは、また何か
言ったが、僕はまたぼんやりしてきて、
頭がクラクラしてくるのを感じた。

間近で感じるその人の「オーラ」は
テレビやラジオで感じる以上に強力
で、圧倒されてしまったようだ。

鈴木杏樹さんはアニメスタッフと
何やら挨拶を交わしている。

僕はのどのあたりが詰まったようで、
ちょっと声が出にくい感じがしたが、
咳払いを2回して椅子から立ち上がり、
自己紹介をすることにした。

「申し遅れました、「ネコ専務シリー
 ズ」を書いているシロネコと申し
 ます。

 あの~、鈴木杏樹さんのことは
 たしか4年くらい前からファンで
 して、

 それで今回、アニメ化にあたって、
 オープニングを歌っていただけた
 ら幸いに思いまして、
 
 それで今日お伺いさせていただき
 ました、はじめまして」

う~ん、こんな感じでいいのだろう
か? 自分が何を言っているのか
もうひとつ意識に上がってこない。








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