妄想小説(短編)
茶色いブリーフケースから出てきたのは、
10個以上のいろいろな色のMDだった。

? という顔で見ているアニメスタッフ
に照れたようにニッと笑いかけた後、

僕は鈴木杏樹さんの方に向き直り、一息
置いて話しかける。

「このMDはですね、杏樹さんが毎朝され
 ている、ラジオ番組を録音したもの
 です。

 え~、このように、あ、すみません、
 ちょっと呼び捨てみたいになってます
 けど、

 「鈴木杏樹5」とか・・こっちは
 「11」ですね・・こういう風に、
 ラベル貼ってますけど、

 たしか3年くらいこうやって、だい
 たい毎朝録音させていただいていま
 した。

 あ、それで何が言いたいかと言うと
 ですね、あの~、要するに、その
 くらい杏樹さんのファンであると
 いうことでして・・まあ要するに
 そういうことで、

 え~と何だっけ、あ~、あ、そうそう、
 それで今回、鈴木杏樹さんにアニメの
 主題歌を歌っていただけたら最高だな
 ~ということでしてね、

 それで今日、どうでしょうかという
 ことをお伺いしにうかがったところ
 なんですけど」

何だかもう、しどろもどろだ(笑)
僕は杏樹さんの目をしっかりと見すえ
ながら、とりあえず言いたいことを一気
に言ってしまうと、

ほうっと息を吐いて椅子に深く座りなお
し、相手からいったん目を逸らしたが、

もう一息ついて再び、目の前に座って
いる鈴木杏樹さんの顔をちらっと見た。

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