今宵…甘ったるい幸福の中で
二人とも黙り込んだまま座っている。

周りは車も通らずやたら静かだった。

「勝手に連れて来ちゃってごめんね~」

洋介から口を開いた。

「びっくりしましたよ」

「だよね~」

洋介はタバコに火をつけて笑った。

「今日は満月だ~」

煙を吐き出して彼が言う。

月に照らされた彼の横顔に雛は見とれていた。
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