今宵…甘ったるい幸福の中で
「お前…泣いてる」

何も言わず雛は首を振る。

「こっち向けよ」

低い静かな洋介の声。
頑なに拒否する雛。

「オラいいからこっち向け」

彼は無理矢理、雛の顔を自分に向けた。

「……」

洋介は目を見開いた。

雛の顔は涙でぐちゃぐちゃだった。

「何かあったのか」

「ヒック…ヒック」

雛はしゃくりあげてただ泣きじゃくる。
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