オレンジジュース[短編集]
「俺…「あ、あのねっ!あたし昨日久我くんに告白されたの!!」
その言葉に目を見開く進。それでもあたしは気にせず続けた。
「で、今日返事するの!だ…だから今日で終わりだね、プロデュース!今までありがとう!本当に久我くんと付き合えることになっちゃうなんて思ってもみなかったよ!」
練習で培ったとびきりの笑顔を進に見せる。
「これからも進とは、親友だよ?じゃ、じゃあ返事してくるねっ!また明日!!」
進が何かを言おうとしていたのを知らないフリして、あたしは走り出した。
「ハァ…ハァッ…」
しばらく走ったあとに立ち止まって呼吸を整える。勢いに任せてさっさと言って来てしまった。
もしかしたら、進から「おめでとう」をいう言葉を聞けたかもしれないのに。
なんで反応も確かめずに走り去ってしまったんだろう…。
「椎名さん?」
ぱっと顔を上げると、久我くんが立っていた。
「あっ…久我くん…」
あたしが名前を呼ぶとにこっと笑う彼。
「返事、しにきたんだね?」
静かにコクンと頷く。そうだ、返事をしにきたんだった。
久我くんから視線を外し、ちょっと俯いて口を開く。
「久我くん…あたし、ずっと前から久我くんのこと……好きだったの」
─そう、ずっと前から好きだった。
「だから昨日の告白、すっごい嬉しかった。夢なんじゃないかなって疑っちゃったくらいだよ」
─胸の鼓動がすごい早くて。
「でもやっぱり朝を迎えてみたら、あぁ、本当なんだなって実感が急に湧いてきたんだ」
─本当…だった。
「あたしね…だから…だからっ…」
────ポタリ。