オレンジジュース[短編集]
…一体いつから?いつから進が好きだった?
いつから久我くんが1番じゃなくて、進が1番だった?
買い物の時から?憎まれ口たたき合うようになってから?
喋るようになってから?出会ったときから?
さかのぼってみても分からない。
でも気付いたこと。
大好きだった久我くんが気付かせてくれたこと。
───"進が好き。"
この気持ち、"好き"の気持ち。
今なら言える、正直に言える。
ふと前を見ると、下駄箱に進がいた。
「あ、椎名」
気付いて近寄ってくる進。きゅっと拳を強く握る。
"椎名"って呼ばれたことにも心が折れそうになった。あたしと久我くんが付き合ったと思って気を遣ってくれたのだろうか。
「…どうした?」
いつまでたっても何も言ってこないあたしに、進はちょっと驚く。
よりによってこの下駄箱で気持ちを伝えることになるなんて。あの女の子の声が頭にリピートされたが、振り払うようにして進を見た。
「進…あたし…「おめでとう椎名。念願の久我と付き合うことになったんだろ?ったくお前抜け駆けしやがってよ~!でもまぁ聞いてくれ!俺さ、隣のクラスの女の子と付き合うことになったんだよ!」
次は進が遮るようにして話かけてきた。
それと同時にその言葉にかたまった。
───付き合う…の?
「いやぁ~元々気になってた子だったんだよ!俺等それぞれめでたくゴールインだな!今日はファミレスでパーティでもすっか?!」
ははっと笑いながら、進が歩き出した。
思いもしない展開にあたしはただ呆然とした。
やっと自分の気持ちに気付けたと思ったらこれ?
あたしの恋ってこんな結末なの?終わったの?
わずか5分もしないうちにあたしの恋は終わったの?
振り向きもせずに歩く進に対しても、うじうじしっぱなしだったあたしに対しても、両方に色々な感情が入り混ざってふつふつと心の底から何かが湧いてくる。
気付いたら走りだしていた。