オレンジジュース[短編集]
「ふっざけんなあああぁぁぁ!!!!!」
そう叫ぶと、あたしは進の背中に飛びかかった。
「ぐはっ!お、おいお前何してんだよ?!」
進は思いっきりよろめいたがなんとか踏みとどまり、すっとんきょうな声を上げながら、あたしを引き離そうとする。
「何してんだって?こっちの台詞だよ!!進こそなんなんだよ?!」
あたしの気持ちは、言葉は止まらない。
「なんだよパーティって?!そんなもんしなきゃいけないのかよ?!意味分かんないよ!別に付き合うって返事してきたなんて言ってないじゃんかっ!つーかむしろ断ったわ!
あ、あたしがせっかく!せっかくっ…!
進のことが好きだって気付いたばっかなのにさぁ!!」
あろうことか、またまた勢いで言ってしまった…。進はフリーズした。ぴくりとも動かない。
あたしは進の背中にしがみついたまま、目を瞑って固まっている。
すっごい気まずい空気を作ってしまった…。
進には彼女もいるっていうのに。言ってしまった。伝えてしまった。
「美佐…ごめん。前言撤回」
ほら、謝られちゃったよ、分かっていたことなのに。振られたんだあたし。
…でも前言撤回ってなに?と、いうか今美佐って…
───ふわり…。
急に優しいなにかに包まれた。暖かくて、ぎゅっとしてくる。
おそるおそる目を開けると、目の前にあったはずの進の背中がない。
「嘘ついた、ごめん。彼女出来たなんて、嘘」
気付くと進の顔はすぐ横にあった。
あたし…抱きしめられてる?
「お前のこと別に好きでもなんでもなかった。最初はな。どっちかっていうと変な女だなって思ってたよ。
でも一緒にいるうちに…いつからだろうな?分からねえや!
んで告白されたんだ、って知った瞬間、すげぇ嫌だった。あぁ、お別れかって…。だから、嘘、ついちった」
明るく進がははっと笑う。あたしの方を押し、ちょっと離れるとじっと見つめる。
「好きだ。美佐」
聞きたかった言葉。すっごくすごく、聞きたかった言葉。
いつから好きだったなんて分からない。
でも、好き。好きだっていう事実がここにある。