オレンジジュース[短編集]
「これでよし……だな」
そう言うと進は店員を呼び、財布を出して万札を何枚か渡していた。
そうしてまたあたしを試着室へ戻し、着替え終わり出てくると、ショ袋を片手にぶら下げていた。
あたしが脱いだ花柄フリルのワンピースは、店員の手によって回収された。…ということは、どうやらあのショ袋には、新品の花柄フリルのワンピースが入っているらしい。
「おい、行くぞ」
「ちょっ、ちょっと待ってよ!」
さっさと歩き出した進を慌てて止める。
「それ買った…んでしょ?だからお金!今渡すから!」
バッグから財布を出すとその手を掴まれた。
ふと見上げると進はこちらを見てニヤリと笑った。
「俺がプロデュースしてるんだよ。邪魔はすんな。言ったろ?俺の願いを聞けばそれでいいって」
そしてあたしの手首を掴んだまま「次の店行くぞ」と再び歩き出した。
それから上着やネックレス、バッグ等を買い揃え、その日の買い物は終了した。
結局あたしの財布からお金が出ていくことは一度もなかった。
「願い……ってなんだ?」
その夜お風呂上がりにぼーっとしばらく考えたが、結局分からなかったあたしは布団に潜り込んだ。